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Reed and Music

ヴィルトゥオーゾのしくみ W.A. モーツァルト「コシ・ファン・トゥッテ」序曲

 テンポが非常に速く軽快で、いかにも「序曲」という趣で始まるW.A.モーツァルトのオペラ「コシ・ファン・トゥッテ」は、「ドン・ジョヴァンニ」の後に作曲されました。所謂男女の物語がコミカルに描かれています。ファゴットにおいては、全曲を通して緩急様々な技術が要求される、難曲です。モーツァルトの難しさの1つに、難所といわれる難しいパッセージをいかにも「楽々と」演奏せねばならない事がいわれます。これは恐らくどの作曲家に対しても同様でしょう。今回はどうしたらその様に聞こえるのか考えます。指を正確に動かすだけではなく、息とリードのコンビネーションで響きをコントロールする事が重要です。

譜例1
「コシ・ファン・トゥッテ」序曲より

 譜例1は序曲よりファゴットソロ部を抜粋した物です。二分音符=120~144という速いテンポで演奏されます。難しいのは①から②、②から③へ行くのにクロスフィンガーが必要な点です。①③に対して②の音はそもそも楽器の響き方が異なるので、速くレガートで吹くとでこぼこした感じになってしまい、運指がやっかいという事もあってどうしても「難しそう」に聞こえてしまいます。

 テンポが速いのでつい①→②を急いでしまいがちですが、滑った感じになって良くありません。ここはを「歌う」意識が重要で、を他の音に比べてほんの少しだけ長くします。出だしのイメージは「やららら」や「なららら」で、決して「ぱららら」となってはいけません。

 が他の音に対して突出して聞こえてしまうのも「楽々と」という感じに聞こえなくなる原因です。この場合は柔らかい響きを意識すると効果的です。細く速い息は響きが硬くなるので、喉や胸を脱力して息の圧力で演奏するように心がけます。音量を下げるよりも柔らかい響きにする事の方がより重要で、②から③への移行が格段に楽になり、結果として自然に聞こえるようになります。

図5

 つまりをエッジの立っていない発音「や」や「な」で始めて、②は柔らかい響き、そのまま③へ、という事になります。この様に演奏する事でヴィルトゥオーゾに聞こえるようになるでしょう。これらの事は、アクロバティックな中にも常に「歌」を求めていたモーツァルトを演奏する上で特に重要といえます。

 リードとしては、スピードだけでなく圧力でコントロール出来る様に調整する事が重要です。具体的には図5Y部及び赤、水色部へアプローチします。

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