実際に演奏する上で重要なポイントの1つに音程があげられます。リードにおける音程へのアプローチは主に、a)総合的に適度な音程に設定されているか、b)極端に高く(低く)なる音がないか、の2点が特に重要といえます。
a) 普段443Hzを基準として演奏していたあるプレーヤーが、440Hzで音合わせをしているオーケストラと競演する事になり、試行錯誤の結果、普段より1mm長いリードを製作したという逸話があります。楽器の状態や奏者によって出てくる音の高低に違いがあるのは明らかですが、アンサンブルにおいて他の奏者と響きを寄せ合っていく課程で、常に高め(低め)にコントロールしなければならない状態で演奏することは、音楽を楽しみ、また創造する喜びを感じるための障害となりえます。
楽器を良い状態に保つ事は勿論重要です。その上でまだ音程が高い場合は、まず第1ワイヤーを緩める事で若干の調節が出来ます。低い場合は逆に締める事で対応出来る他、マンドレルを用いて差し込み口を深く加工する事も有効です。また、第2ワイヤーを締める事も若干ながら有効です。第2ワイヤーは振動を纏める為に重要な部分ですので、緩める事は基本的にありません。尚、リードの基本的な寸法が音程に関係してくる事はいうまでもありません。
b) リードの振動が豊かでないと、例えばG3やA3、またA2以下のバス音域が極端に高くなる傾向があります。また、振動にまとまりがないと、D4やEs4などテノール音域の音程が極端に低くなる傾向があります。振動の調節はワイヤーの調節の他、図2Z部の調整によってコントロールします。
振動を豊かにするには図4青色部に対して、振動をまとめるには黄色部に対してそれぞれアプローチする事が有効な調整法の1つといえます。
音程とは実に様々な要素によって成り立っています。含まれる倍音の構成によって聞こえる音の印象が変わってくる事も考慮する必要があるでしょう。いずれにしても、音程の取りやすいリードは、ファゴット演奏において大きなアドヴァンテージと言えるでしょう。