オペラとオペレッタの違いについての厳密な説明はここでは省略する事にしますが、おおまかにオペレッタとは、オペラのデフォルメであると捉えると良いかと思います。オペレッタの魅力はなんといってもその「楽しさ」で、オペラの場合とかく「生きる事の意味」であるとか「愛とは何か」であるとか「神の物語」といったテーマを取扱いがち(勿論他にも様々ある)ですが、オペレッタのそれは、軽快なリズムと分かりやすいハーモニーに乗って展開される、所謂コメディードラマで、誰が誰に惚れたとか、人違いで恥をかいたとか、お酒が美味しいね、という風に、ひたすら愉快です。
作曲家によって様々ですが、オペレッタにおけるファゴットは、愉快なシーンからしっとりとしたシーンへの「移り変わり」で印象的に用いられる場合が多いです。端的な例として今回はJ.シュトラウス二世作曲の「こうもり」を取り上げます。
譜例5は「こうもり」序曲のファゴットパートから抜粋した物です。①は軽快なAllegro部、四分音符=120程度で演奏されます。この軽快感は①の十六分音符をスタッカートで演奏することによって表現出来ます。このスタッカートを徐々に柔らかくしていく事で、後のAndante con motoのしっとりした感じへ自然に移行していきますので、鋭く軽いスタッカートから柔らかいスタッカートまでをコントロール出来るようにする事が重要です。舌の使い方がよく言われますが、スタッカートのコントロールには息のスピードも大きく関係していますので、総合的に考えると良いでしょう。
②及び③はゆるやかにディミヌエンドします。音量を下げるというよりも響きを柔らかくするという意識が大切です。ヴィブラートを併用すると効果的です。尚、ヴィブラートについては後日、別途考えてみたいと思います。
④は1stファゴットのみで演奏されます。Andante con motoに向かって移行していく様を提示する事が大切です。具体的には④をやや大きくmfで始めてフェルマータの間維持し、Andante con motoに入って二拍目までの間をディミヌエンドします。ここでもヴィブラートが効果的です。大切な事は、フェルマータの間であっても常に拍子感を保っておく事で、それによって響きの方向性を失わずに、つまり活きた音として響かせる事が出来ます。こういったただの伸ばしでしかない箇所であっても、常に音楽の方向性を意識する事が重要です。オーボエが入って来た所からは内声となるので柔らかい響きを意識します。その後のクレッシェンドは⑤からすると良いでしょう。
スタッカート自体はファゴットの得意とする所ですが、それを自在にコントロールする為には様々な息に的確に反応するリードが必要になります。図5赤、水色部およびY部が厚いと振動が制限されてしまうので、特に柔らかいスタッカートが難しいと感じる場合は削ってみると良いでしょう。舌は極めて柔らかく保ち、主に息を使って音を出す感じにするとコツが掴めると思います。
また、④のhが低くなったり⑤のクレッシェンドがきつく感じる場合は、二番ワイヤーを立てる、Y部および黄色部を削る、の二点を試してみましょう。