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Reed and Music

肯定的な視点 J. シュトラウス二世 オペレッタ「こうもり」より “メロドラマ”

 前回に引き続きオペレッタ「こうもり」を取り上げます。

譜例6
オペレッタ「こうもり」“メロドラマ”より抜粋

 譜例6は「こうもり」第三幕第二曲“メロドラマ”コーダ部よりファゴットパートを抜粋した物です。四分音符=90程度で演奏されます。軽快な曲が続く中、一転物悲しく、しかしどこか滑稽な曲です。

 さて、実際の演奏に際して、このファゴットソロはそれまでのフルートソロに対する合いの手として現れます。ですから表記されているppではなくmfでソリスティックに始めます。問いかけに対する返答という関係が重要です。のアクセントは静かな動悸を表していると言え、テヌートアクセントと解釈できます。その後の八分音符へのテヌートは、動悸という緊張に対する弛緩であり、付加されているディミヌエンドも同様の意味を持ちます。余談ですが、この緊張と弛緩の心地よい繰り返しが、音楽の根幹をなす重要な要素の一つと言えます。不協和音から協和音へ、属調から主調へといった事も、意味として同様です。

 ②及び③は、ある伯爵がため息をついているシーンです。二度のため息には違いがあって、最初ははっきり、二度目はさらに深く、といった具合になります。その心痛を効果的に表現するためにも、また音楽的な収束を見せる意味でも、③を②に対するエコーとし、一つのコンビネーションと考えて演奏するのが良いでしょう。具体的にははmpで、クレッシェンドし響きを膨らませていくのに対して、はクレッシェンドせず、音量もpに抑えます。こうする事で結果として一つの大きなフレーズを得る事ができ、ため息の深さに繋がっていきます。

 piu riten.からは静かに収束に向かいます。途中にある<>(クレッシェンドディミヌエンド)は、それをする事自体が目的ではなく、ネガティブな響きにさせない事を意図していますので、リラックスした充分な息で柔らかく響かせる事が重要です。は難しい箇所ですが、優しく消え入る様に納める事が理想です。

図5

 この曲は特にリードに左右されると言って良いでしょう。ポイントは②と③の響きの違いを表現できるかどうか、③をpで柔らかく発音できるかどうか、また④のディミヌエンドが音程を上ずらせず実現できるか、です。演奏の技術が重要なのは言うまでもありませんが、リードへのアプローチとして全体的に振動にまとまりを持たせる方が楽です。図5赤、紫、水色部を適度に薄くして息への反応を良く保つ事も重要ですが、黄色部を少し削り、振動をコンパクトにするのがコツです。その上で身体の力を抜いてリラックスした息を充分に楽器に送り込み、息の圧力によって響きが変わる事を意識しながらコントロールすると良いでしょう。

 ところでこのため息ですが、深い悩みや悲しみによる物ではなく、前日のお酒のせいで頭痛がひどく、飲み過ぎを後悔しているというものです。この後、同様に飲み過ぎた紳士とともに悶着するのですが、その滑稽さと愉快さがオペレッタの特徴の一つです。そしてその中心には、常に人に対する肯定があります。現実社会にいる人々を巧みにデフォルメした登場人物は、現実社会と同じように失敗や過ちを繰り返し滑稽さを笑われながら、常に愛される存在として描かれ、愛すべき音楽を歌っています。この人間に対する肯定的な視点こそがオペレッタの最大の魅力であり、今なお存在し続ける理由である、と筆者は考えています。

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